【レポート】特別講座:スポーツを通じて考えるウェルビーイングな社会
2月13日、日本車いすバスケットボール連盟副会長の竹内美奈子さんをゲスト講師にお招きして、特別講座を開催しました。ご参加いただいた皆さん、どうもありがとうございました。
たくさんの質問も出て、みなさんが大変熱心に参加されていました。
簡単ですが、竹内さんのお話の内容を報告します。
■マイノリティとしてスポーツ界の改革に乗り込む
竹内さんはもともとは会社員。現在は組織開発や人材育成を自社のビジネスとして取り組まれています。Bリーグ創設時から数少ない女性理事としてスポーツ界の改革に着手されました。
当時の日本のバスケットボール界は、内紛で混乱。国際試合には出場停止を受ける状況でした。
入って驚いたのは、会議のような公の場で「ハラスメントではないか?」と感じるような行為が公然と行われるような状況でした。
その後、所属団体を移ってからも同様のことを見聞きし、スポーツ界でコンプライアンス意識がない、ガバナンスがきいていないことに問題意識を強く持たれるようになります。
「組織改革」の専門家として見過ごせないと、率先して改革に着手されます。
■なぜ困難な道をあえて選んだのか?
スポーツ界の当時の状況に驚き、改革に取り組まれ始めた竹内さん。しかし予想はしていたものの、改革の壁は高かったそうです。いろいろ提案してもスルーされる、上層部も理解されない…
あえてそうした状況でも改革に取り組まれ続けたのは、自分自身のパーパスが、「よりよい組織を作る」ことにあると感じていたからだそうです。「信じていた」といってもよいかもしれません。
特に車いすバスケットボールに関しては、お母様が点訳者のボランティアをされていて幼いころから視覚障害の方が身近にいたことも影響が大きかったとのこと。続けて作業を行うとたいへん肩が凝ってしまうようなことを続けていたお母さま。それを引き継ぐことは難しいけれども、ご自分なりの形で障害者のために何かをしたい…そこで車いすバスケットボールのボランティアを始められました。
印象的だったのは、車いすバスケットボール界をよくするという思いにとどまらず、「車いすバスケットボールというスポーツを通じて、社会全体をよくしたい」という強い思いをお持ちだったことです。
竹内さん自身が車いすバスケにボランティアとして長年かかわってこられた経験から、車いすバスケには、健常者/障害者の枠を取り払う可能性を感じたそうです。普及を通じて社会を分断している壁を取り除くことができ、多様な人がつながる社会を作りたい…そう語られていました。
■「改革」を行う上で大事にしていること
改革には抵抗はつきもの。そんななか、竹内さんは具体的にどんなことに取り組まれたのでしょうか。
まず、「外圧」を利用。ガバナンスに通じていて、思いを共にしてくれる人にめどをつけて、その人の協力を得たそうです。
また、改革の必要性について理論武装もしたとのこと。ただ、ここで印象的だったのは、「理論」が相手(この場合、スポーツ団体)にとってもメリットがあるというスタンスで理論を作られていたことでした。
その姿勢は、竹内さんがおっしゃったポリシー、「自分の正義を押し付けない」ということにも通ずると思います。
抵抗する側にも「正義」がある。それを尊重する。だからこそ、相手もこちらの意見に耳を傾けてくれるとおっしゃっていました。
そのうえで、必要な組織を作っていかれたのだそうです。
■ウェルビーイングの体現
ゲストスピーカーの竹内美奈子さんが目指しているのは「より良い組織づくり」です。
それは、組織の中のメンバーがハラスメントを受けたり、自分らしさをゆがめられることのないものです。そして自分の可能性に挑むことのできる環境があるということだと思いました。
これは、しあわせの4因子である「自分らしく」「やってみよう」「なんとなかる」に通ずるものです。
また、竹内さんは何度も「パーパス」という言葉を口にされていました。ご自身のパーパスは、よりよい組織を作ることです。
そして竹内さんの口ぶりから、大きな困難があっても、そのパーパスに取り組める機会があることに感謝していらっしゃると感じたのは私だけでしょうか。
4因子の四つ目「ありがとう」を体現されているように感じました。
竹内さんがパラリンピックについて書かれたコラムをご紹介して、このレポートを閉めたいと思います。
東京2020オリンピック・パラリンピック競技大会を終えて ~その1 車いすバスケットボール活躍のご報告~
東京2020オリンピック・パラリンピック競技大会を終えて ~その2 パラリンピック自国開催の意義~
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